「雨降る碧の川辺に咲く桜」
ようやく、湘南地方でも桜の花が盛りを迎えようとしている。
こんな年は珍しい。と言うか、僕の記憶にはない。
近くの街に住む老父と電話で話していたら、実家の周りの山の桜は、三十年来で一番遅いそうである。
十年ほど前まで、僕はこの時期に富山県の庄川流域の桜を毎年見に行っていた。
庄川流域は、毎年、ほぼ四月十日頃に盛りを迎えるのである。
湘南地方の桜の盛りは年度の変わり目なので、なかなかゆっくり花見ができないからでもあった。
東北地方ではさらに遅くなる。
たとえば、緯度的には最南にあたる奧会津地方ですら、山中では雪深いためか、桜が咲き始めるのは、四月の末頃である。
写りはよくないが、今日の一枚は、新潟と山形の県境付近で撮ったもの。
盛りを過ぎてはいる桜だが、白碧の川面と新緑との取り合わせの美しさに、ハッとさせられて、クルマを止めたのだった。
ゴールデンウィークに、新潟県の村上沖に浮かぶ宝の島、粟島にキャンプに出かけた帰り道だった。
荒川と米坂線沿いに東へ進み、小国を経て米沢盆地から、会津へ入って帰ってくるのがいつものルートだった。
被災地の多くは、ゴールデンウィーク前後が、桜の盛りになる土地が多い。
被災者の方々が、少しでも穏やかな気持ちで桜を眺めることができるような、そんな明日が生まれることを祈って止まない。