★★谷津矢車先生に『猿島六人殺し 多田文治郎推理帖』のご感想を頂きました!★★
- 2018/01/03 21:41
- カテゴリー:作品・お仕事
「おもちゃ絵芳藤」(文藝春秋)、「某には策があり申す 島左近の野望」(角川春樹事務所)などで大活躍なさっている歴史時代小説界の超実力派プリンス、谷津矢車先生。
ツイッターに『猿島六人殺し 多田文治郎推理帖』の素晴らしいご感想をご投稿くださいました。
あまりに嬉しかったので、谷津先生のお許しを頂いてこちらに転載させて頂きます。
皆さまにも、ご一読頂ければ嬉しいです。
――「猿島六人殺し 多田文治郎推理帖」(鳴神響一 幻冬舎)読了。鎌倉に逗留していた切れ者浪人・多田文治郎はある日、ひょんなことから近隣の猿島で起こった奇怪な連続殺人の検分に同行することになる。文治郎の推理によって明らかになることの真相とは、そして犯人の悲しき動機とは。
いや、本書は実に欲張りです。当初は島にいた六人が「どのように」殺されたのかが焦点となり、やがて「誰が」殺したのかが焦点となり、「なぜ」犯人がこのような凶行に手を止めたのか……と、ハウダニット → フーダニット → ワイダニットと一冊の本の中で三つの論点が提示されている。
実は本書の力点はワイダニットなのですが、その種明かしが終わった後にももう一つワイダニットが入ってくるあたり、欲張りにもほどがある(誉め言葉)。最後の最後まで読者を驚かせようというサービス精神には頭が下がるばかり。
本書におけるワイダニットは江戸時代という時代性を強く映したもの、言い換えるなら現代では成立しえない人間のあわいを据えておられるあたり、時代ものとして手に取られる読者さんにもきっちりとサービスしているのです。
本書とは直接関係はありませんが、猿島は実在します。日蓮上人が猿に助けられたという縁起を持つ島なのですが、太平洋戦争期に基地として整備された経緯もあって軍事クラスタの間では有名な島であります。温かくなってきましたら本書を片手に散策も一興かと(どーも最近入島料を取っている由)。
谷津先生、本当にありがとうございます。
次回作への大きな勇気を頂けました。
今後ともご指導ご鞭撻のほど、何とぞよろしくお願い申し上げます。
※写真はイメージです。(ホントは式根島だけど、僕の脳内では宝暦の猿島です)