★★井口由美子さまに素晴らしい書評を頂きました!★★
- 2020/07/10 10:50
- カテゴリー:作品・お仕事
世界唯一の月間フラメンコ専門誌「パセオ」執筆陣の井口由美子さまに『令嬢弁護士桜子 チェリー・カプリース』(幻冬舎文庫)の素晴らしい書評を頂きました。
「パセオ」8月号にご掲載頂けるとのことですが、井口さまのお許しを頂いて転載致しました。皆さまにぜひお読み頂きたいです。
――鳴神響一さんの小説、『令嬢弁護士桜子 チェリー・カプリース』読みました。パガニーニの名曲「カプリース」の狂おしい旋律を感じながら没頭してしまいました。
感想を書かせていただきました。
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300ページ強があっという間だった。
本誌で大人気の小説『祝祭のアレグリアス』連載中の鳴神響一さん、6月の新刊『令嬢弁護士桜子 チェリー・カプリース』。桜子シリーズ第二弾は格調高い音楽ミステリーだ。
ヴァイオリンの恩師がコンサート中に毒殺され、悲嘆にくれる桜子に、容疑者となった男の弁護依頼が舞い込む。冤罪かもしれない、けれど真犯人であったとしたら私情を捨てて弁護する覚悟が自分にはあるだろうか? そんな葛藤を抱えながらも、それでも真実を追求することこそが大好きだった恩師への何よりの追悼とわが身に命じ、事件に挑んでいく桜子。その折れそうで折れない芯の強さに導かれページをめくる手が止まらなくなる。
鳴神さんの筆運びはいつも読みやすい。それは事実をシンプルに且つ丹念に積み重ねていくからだ。だから小説の情景が映像のように脳裏に浮かぶ。そして一方で、その手法により、あらゆる知識がすらすらと頭に入って来て、読み終わる頃には物語に関わる難しい専門分野への理解と興味が深まっている。法律用語しかりクラッシック音楽しかり毒物パリトキシンしかり。難解な用語をさりげなくかみ砕く手腕に驚かされる。博識だからこそ偏らない。この充実した読み応えも人気の理由のひとつだろう。
たとえば前半では拘留された被疑者に桜子が接見するシーンが詳しく描かれる。取り調べの制度や黙秘権をはじめとする被疑者の権利などがごく自然な流れで解説されていく。思わずグイと引き込まれ、もし自分が逮捕されたら、などといつのまにか思い描いてしまうのだ。
読み終えてさらに「鳴神小説」がやめられない理由に気づく。元華族の家系に生まれた深窓の令嬢桜子の美しさは表面だけのものではない。他者を思いやる知性を持ち、人が幸せになる音楽を愛し、疑われる孤独を知り、信念のためにクールな決断をくだす、そんな内面の深い美しさを秘める。リアルを積み重ねながら、現代において見失いがちな誰もが憧れる理想を描き切るところに、鳴神響一さんの真骨頂がある。
(この感想はパセオ8月号に掲載です)――
本作への深いご理解と、鳴神作品へのありがたいご評価に感激しております。
井口さま、心より感謝申しあげます。
今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申しあげます。