大先輩の歴史時代小説家、秋山香乃先生に『令嬢弁護士桜子 チェリー・ラプソディー』(幻冬舎文庫 12/5刊行)の素晴らしいご感想を頂戴致しました。
お許しを頂いて転載致しました。皆さまにもぜひお読み頂きたいご感想です。
【読書感想文】
『令嬢弁護士 桜子 チェリー・ラプソディ―』 鳴神響一先生著
少女時代のトラウマから、「濡れ衣に押しつぶされそうになる人」「を救いたい」と思った、その一途な思いから弁護士になった主人公の桜子さん。
私も少女時代に同じような思い出があって、何十年たっても忘れられず、思い出すとあのときの疑われた嫌な気持ちがまるで昨日のことのようによみがえります。
出来事の細部はもう覚えていなくてざっくりとしたことがらが記憶として残っているだけだけど、味わった感情だけは絶対に忘れないといいますか……。思い出すといまだもやもやするといいますか。
(この手のトラウマをもっている人て、けっこう多いのではないかと思うのだけど、どうですか)
それで、もうしょっぱなから胸をぎゅっと掴まれたような感覚に、このお話の世界にのめり込んでいきました。
なにより主人公の桜子がとても魅力的な女性なのです。
純粋で、なにごとにも一生懸命で、根が親切で、優しいお嬢様。令嬢弁護士という設定だから、とても綺麗な日本語でしゃべるのだけど、そこもなんとなくほっと癒されます。綺麗な日本語ていいよね~。
綿密な取材をもとに展開する物語には厚みがあります。ふいに警察に連れていかれ被疑者になったときに、何をした方がよくて、何をしない方がいいのか、弁護士は何をしてくれるのか、被疑者はどういった権利があるのか、警察の本来の権限はどこまでなのかなど、知らないことばかりで「え、そうなんだ」「それ、しなくていいんだ」「あ、この手の問いも答えなくていいんだ」と目から鱗の連続でした。
パンツはいや。絶対に嫌。←なんのことを言っているのかは読んでみてください。
こういうの、みんな知ってることなの?
私は初めて知って、サーと血の気が引きました。
もう絶対にそんなパンツ無理だから。
桜子の台詞の中に、警察とは「本来」何をするところなのかを説明しているところがあって、そこも、ええっ、そうなんだと思いつつ、ああ、言われてみれば確かにそうかも……と驚きましたし、知らないことをたくさん知れてお得感満載な一冊でした。
物語も被疑者がどこまで本当のことを言っているのか、冤罪なのか、やっちまってるのか、なかなかどっちかわからなくて、ドキドキしました。
本を読むときはいつも、この小説はこういうお話で、こんな感じのラストに進むのかな……みたいな予想を自分でたてつつ頁をめくるのだけど、今回はまったくその予想が外れて、大満足です。
なるほど~こうもってきたかーと唸りながら本を閉じました。
が、早くもまた桜子さんに会いたくなっているので、次回作が今から楽しみです。
とても面白かったです。――
初めての弁護士ものだけに、本当に大きな勇気を頂くことができました。
次回作へのエネルギーが湧いて参りました。心より感謝しております。
今後ともご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願い申しあげます。
★秋山先生の最新刊『氏真、寂たり』(静岡新聞社)