鋭い視点で歴史を見つめ、闊達に描き続ける歴史時代小説界の若手ホープ、谷津矢車先生。(僕より先輩作家でいらっしゃいます)
ツイッターに谷津先生が『令嬢弁護士桜子 チェリー・カプリース』(幻冬舎文庫)の素敵なご感想をご投稿下さいました。
谷津先生のお許しを頂いてこちらに転載致します。 皆さまにも、ぜひ、お読み頂きたいです。
――『令嬢弁護士桜子 チェリー・カプリース』(鳴神響一 幻冬舎文庫) 読了。田園調布の令嬢にして正義の心を宿す弁護士一色桜子の次なる刑事担当事件は殺人事件の容疑者の弁護活動。しかし、この事件の被害者は、桜子のバイオリンの恩師で……?
この著者さんは歴史小説から現代小説まで幅広く活躍なさっておられますが(代表作は『真田夏希』シリーズ)、この著者さんの核の一つは「サスペンス」であろうと思います。実際に、代表作である『真田夏希』シリーズはそのサスペンス的なドラマ作りが際立っていますし、本作もまたサスペンスの系譜に連なる作品でありましょう。
この著者さん作品の特徴の一つに「リアリズム志向」があります。「令嬢弁護士」(旧華族の一族で今もセレブの弁護士)という設定、いくらでもキャラクター化できるはずですが、著者さんはキャラクター化を拒否し、地に足ついた登場人物としての像を与えています。(この話、どっちがいい悪いではなくて、あくまで「特徴」です)
そして、いい意味で夏希の体当たり感が楽しい『真田夏希』シリーズと一線を画した、桜子のどこか超然とした感じ、正義に対する責任感から醸される令嬢感が本シリーズの魅力。
扱う事件も令嬢弁護士にふさわしいクラシック音楽絡み。『真田夏希』でできないことをやっておられる感もあり、そこもいいなあと。
シリーズは著者さんの工夫と読者さんの支持、その二者の共犯によって育つものだと思います。一読者として大きく育ってほしいシリーズ。――
谷津先生、本当にありがとうございます。
お言葉の通り、サスペンスは僕の核のひとつだと思っています。
また、物語を創ってゆく際には、どうしてもリアリズムを追求してしまいます。
桜子や夏希たちに実在してほしいと願っているのかもしれません。
そんな物語世界を気に入って下さる読者さまとの、まさに「共犯」関係を築ければと願っております。
今後とも鳴神作品をどうぞよろしくお願い申しあげます。
★谷津先生の『廉太郎ノオト』(中央公論新社)が第66回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書(高等学校の部)に選ばれました!
写真は土曜日の江の島です。
Pentax K-1 + TAMRON SP AF70-200mm F2.8