明治7年(1874年)3月20日に南伊豆の入間村の沖で、フランス船籍のニール号が沈没し、明治時代最大級の海難事故となりました。
『風巻(しまき) 伊豆春嵐譜』(早川書房)は、この海難事故を舞台とした作品です。
残された史料が少なく、ネットにも誤った記述が散見されます。
集められるだけの資料を集めて調べた上で、本作では大胆な物語設定をしてみました。
写真は冬場の入間で撮ったもの。
冬から春にかけての西南伊豆地方は、嵐でなくともこんなすごい風が吹き荒れます。
十数メートルの崖の上でこの状況です。
海面から巻き上げられた海水が強風に乗って、海抜十数メートルの位置にいた僕に襲いかかりました。
左手の堤防や漁船と比べると、波がどこまで巻き上げられているか、おわかり頂けると思います。
本作を書こうと思った瞬間でした。
揺れ動いていた明治初頭の伊豆国(当時は足柄県でした)。
漁村で生きる人々を襲った「風巻」を、若き漁夫の達吉と一緒にご体験頂ければと願っております。
"『海』(La mer)"
幻聴は、ドビュッシー(Debussy)作曲の交響詩『海』(La mer)(公式)
パーヴォ・ヤルヴィ(Paavo Järvia)指揮、hr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)の演奏です。
OLYMPUS C-5060